大規模修繕工事とは？必要性や施工内容、適したタイミングについてご紹介
大規模修繕工事とは、その名のとおり大がかりな修繕工事を意味します。
頑丈に建てられたものであれば、大規模な工事は不要なのではないかと思うかもしれません。
しかし、建物は雨や風、強い日差しの影響を受けて日々劣化してしまうため、大規模修繕工事は定期的に行わなければなりません。
この記事では、大規模修繕工事が必要な理由や内容、行うタイミングについてご紹介していきます。
大規模工事って何？改修工事との違いについて
大規模修繕工事とは、建物の劣化を防ぐために行う工事です。
個人が修繕目安や計画を立てて行うものではなく、国土交通省のガイドラインの目安に記載されている築12年を基準にしています。
ただし、10年経過した際の定期点検などで大きな不具合が見つかった場合には早急な修繕工事が必要です。
大規模修繕と改修は同じ意味に捉えられやすいのですが、実際には別の意味があります。
修繕は建築当時の水準と同じ性能・機能に回復させるのが目的です。
傷んでいる部分は部材の取り替え、修理などで問題なく使用できる状態に戻さなければなりません。
特にマンションなどでは、日々使用している中で生じた不具合を直すための小規模な修繕工事も行います。
それとは別に、決められた年数に一度、大規模修繕として建物の維持管理目的で足場などを組んだ計画修繕が行われるのです。
一方、改修は建物自体の機能や性能を向上させ、住みやすい環境に整えることを目的にした工事になります。
建築当時に比べて、時代の変化や周囲の環境が変わることもあるでしょう。
そのような環境に合わせて、建物の性能や居住性を高めるために行われます。
なぜ大規模工事が必要？
大規模修繕工事が必要な理由は、経年劣化による影響が少ないうちに直すためです。
建物を少しでも安全に長く使うためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
特にコンクリートでできているマンションなどは、見た目に異常がなくても内部が劣化しているケースがあります。
コンクリートの内部は鉄筋が埋め込まれているため、さびてしまうと建物の強度そのものが弱まってしまうのです。
本来は、空気に触れたり雨や風の影響を受けたりする外部から内部の順に変化していきます。
しかし、鉄筋の建物にひび割れや亀裂などがあると、防水層が役割を果たすことができず、そこから空気や水がコンクリートの内部に浸透してしまい、劣化を引き起こしてしまいます。
このような内部の劣化が深刻な問題になるだけでなく、建物の安全性を確保することもできません。
そのため、軽度な劣化のうちに修繕を行う必要があります。
工事の内容を詳しく紹介！
大規模修繕とは、どのような工事が行われるのでしょうか？
大規模の基準は、柱・壁・梁・屋根・床など建物の主要な部分を50％以上の範囲で修繕することです。
ここでは、工事内容についてご紹介していきます。
- 仮設工事
大規模修繕工事前に必要なのが仮設工事です。
足場や現場の事務所として使用できる部分を仮設で設置します。
力仕事や外仕事を行う作業員にとって必要な場所であると同時に、塗料の飛散防止や落下防止の意味も込められています。
工事の品質保持の役割もあり、欠かせない設備です。
- 下地補修工事
天井や壁などコンクリートの躯体(くたい)部分にできたひび割れなどの補修を行います。
下地補修工事は、その後の工程に大きな影響を与える可能性があります。
綺麗に仕上げたとしても、状態が悪いと同じ症状がすぐに出てきてしまうため、丁寧な作業が必要です。
建物の耐久性を左右する工事にもなることでしょう。
- タイル補修工事
年数が経過することで、施工当時にはしっかり接着していたタイルが浮いてきたり、ひび割れてしまったりすることもあります。
このままにしておくと、雨水が入り込んでコンクリートを傷めてしまうだけでなく、はがれたタイルやコンクリートが落ちてしまえば通行人に当たる可能性も十分に考えられます。
大規模修繕工事では、足場を組んでタイルの状態を目視で確認します。
耐久性や防水性の回復、安全確保の観点からも必要な工事です。
- シーリング工事
外壁のつなぎ目、サッシの周辺に使用されているシーリングは、経年劣化によって硬化してひび割れを起こします。
このシーリングの隙間から雨水やほこりが入り込みやすく、これらが内部に浸透して雨漏りの原因になる場合もあります。
大規模修繕工事の際には、シーリングの打ち替え工事が必要です。
一斉に新しくすれば、躯体に雨水を浸入させることがなく、建物の気密性も高められます。
- 外壁塗装工事
大規模修繕工事には、外壁塗装工事も必要です。
塗装は美観を整えるだけでなく、汚れや雨水からも建物を守ってくれます。
どうしても塗料は劣化が進むことで接着力が低下してしまい、その部分から浸入した雨水や汚れがコンクリートを傷めてしまうのです。
外壁塗装工事では付着力の確認を行い、塗料を塗り直して機能性を高めます。
- 鉄部塗装工事
建物の鉄部部分は経年劣化でさびが生じやすく、放置してしまうと耐久面で大きな問題が出てきます。
さびている部分があれば、ワイヤーブラシやサンドペーパーを使って丁寧にさびを落とし、その後塗料を重ねて保護し直します。
この工事によって、耐久性と見た目を整えられるでしょう。
- 防水工事
耐久性に優れているコンクリートでも経年劣化で内部に水が入ってしまえば、構造部分に大きなダメージを与えてしまいます。
特に屋上やバルコニーは雨に当たりやすい部分なので、雨水や汚れを躯体に浸透させないために防水工事が必要です。
適切な防水工事を行えば、建物を守ることができます。
- 付随部分工事
建物には、必要に応じた工事が必要です。
エントランス・玄関扉・共用部分・サッシ・給排水管など、建物に付している部分に合わせて行います。
大規模修繕工事の際にはこれらの劣化箇所を直すだけでなく、機能の改善や時代に適した設備を採用すると安全性や機能性が高まります。
どのようなタイミングで工事するべき？
これらの大規模修繕工事は、どのようなタイミングで工事すべきでしょうか？
基本的には工事内容は年数ごとに行いますが、劣化や修繕の具合によって変わってきます。
12年を一区切りにして大規模修繕工事を行っていきますが、1回目は外壁中心に行われることが多いです。
回数を重ねていくたびに、安心と快適な住まいのための性能を良くする必要があります。
2回目は1回目の工事よりも広範囲な修繕工事が必要です。
築25～30年で行う3回目の工事では、建物全体で工事を行うほど大がかりになります。
この際に、時代に適した設備、部材、耐震補強、省エネなどの付随工事も必要になりやすいです。
また、工事とメンテナンスは異なるので、4～6年、7年～10年、11年～15年、16年～20年という感覚でメンテナンスを少しずつ行います。
これはタイミングというより周期的なものなので、この期間が来たら工事のタイミングであると覚えておきましょう。
大規模修繕工事を成功させるには？
大規模修繕工事を成功させるには、いくつかのポイントがあります。
以下のポイントを押さえておくと、工事がスムーズに進みやすくなるでしょう。
- 管理組合と意見をまとめておく
工事前には、管理組合の代表が工事を主導する部分があります。
ここで住民に対して説明会がなかったり、意見をまとめなかったりすると反発する意見が出てしまうでしょう。
スムーズな工事にするには透明性や公平性を保つことを意識し、全員が同じ方向を向けるよう情報共有を行う必要があります。
- 予算工事計画のバランス
工事項目の中には、実際に確認してから予算を出す場合があります。
修繕個所が増えてしまえば予算も高くなりがちですが、立て続けに不具合が見つかっても追加工事が増えるのはよくありません。
現状を踏まえて、適切な補修と機能性が維持できるよう予算と計画のバランスを考えましょう。
大規模修繕工事は計画的に
マンションなどでは、大規模修繕工事が必要になってきます。
これは勝手に判断するものではなく、適切なタイミングで行う必要があります。
周期的なものとなるので、今回ご紹介したタイミングを参考にして修繕工事計画を立てるのがおすすめです。
修繕工事を行う際にはマンションの管理組合から透明性と公平な意見を元に、工事計画を立てる必要があります。
わからないことがあれば、大規模修繕のプロに適切な判断やアドバイスを受けるとスムーズに進むでしょう。
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